荻原規子『ファンタジーのDNA』
動物エッセイに続けて読んでみた。
また読みたい本が増えたし、ファンタジーというものについて私自身もっと考えてみたいと思えた。
本全体の要約をする気はないけれど、私個人にとって重要に思えた部分をメモしておく。メモだけ見てもさっぱりだと思うけど、内容はもっと豊富で多岐に渡っていて、話の筋道ってもんもあります。
I. ファンタジーの根っこ
- アラン・ガーナー『ふくろう模様の皿』
土地との繋がり、神話の水脈。
神話はホラーより怖い。「本人が処理し終えたと思っていたものを深淵からひきずりだす」強力さ。
- 中沢新一『熊から王へ』
熊と言葉を交わし、熊の世界へ連れて行かれる神話……動物と人間の均衡を、精神世界につくりだす装置
II. アニメと児童文学と
架空だからこその、拠り所とする身体感覚の重要さ
昔ばなしが細部をそぎ落として汎用の紋切り型に変えたものを、ファンタジーは個人の創造力でもう一度膨らませる
III. 読書という宇宙
- 『オンリー・コネクト』
「ただ結びつけることさえすれば」よい。ファンタジーとは橋渡しである。
横滑りする知性
- パトリシア・A・マキリップ『妖女サイベルの呼び声』
V. 私的ファンタジーの書き方
ファンタジーにおいてひときわ顕著なのは、他のだれの害にもならないけれど作者自身を傷つける象徴、自分の無意識から出てくるもの、というものの存在。
必要なのは、謙虚な態度、古くから人間のイメージに巣くう存在への敬意。
私たちは切り離された孤独な存在ではなく、遠い祖先につらなる何ものかをかかえた存在であり、存在することそのものへの神秘さを信じることができるということ。