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観たい:「イメージの力 - 国立民族学博物館コレクションにさぐる」展(六本木)

いよいよ明日から開催の、「イメージの力 - 国立民族学博物館コレクションにさぐる」展

開催に先駆けて、今回の展示品を所蔵する国立民族学博物館(大阪)では、機関誌『月刊みんぱく』にて、「イメージの力」特集が組まれています。

で、読んでみました。


『月刊みんぱく』2014年2月号「特集 イメージの力」
  1. イメージの力をさぐる 吉田憲司
  2. 人類学とアート―作品の力はどこにあるのか 小泉潤二
  3. アートディレクターが見たみんぱく資料 原田祐馬
  4. 「イメージ」雑感―美術史学の立場から 長屋光枝

内容について触れる前に、まず、「イメージの力」展に対するイメージ(駄洒落のようになってしまった)を高めておきたいところ。今回、新美術館のサイト上にはあんまり展示物の写真は出ていない(Facebookページにはちょくちょくアリ)。

そこでまずは「アートディレクターが見たみんぱく資料」(原田祐馬)をめくってみると、見開きのページにぽんぽんと、どれもパンチの効いた作品の写真が。ウルトラ怪獣みたいと言われている子が気になる……。

さて、今回の展覧会について、「イメージの力をさぐる」(吉田憲司)では、「……人類の生み出したイメージの喚起する感覚や効果、すなわちイメージのはたらきや享受のありかたに普遍性があるか否かを観客とともに体験的に検証してみようというもの」であると述べられています。展覧会サイトを見てみても分かる通り、展示の章立てはどうやら地域別とか時代別とかにはなっていなくて、ものの役割とか、造形の方向性で分けられている。それによって私たちは、単に分類されたものを観覧するのではなくて、たとえば「目にみえない存在を、人はどんな工夫をして、どんな方法によって造形化するのか?」ということについて「普遍的」に考えることができる、という寸法のよう。

とは言っても、「イメージのはたらきの普遍性」とは、一体なんぞや? それについては、「人類学とアート―作品の力はどこにあるのか」(小泉潤二)でもうちょっと掘り下げられています。それによれば、イメージの持つ力とは、「もの」やかたちに内在するのではなく、それを視る人の側に生まれるものである、と。ならば、それを視た人たちの中に生じる力は、それぞれ同じ力なのか? アフリカで作られた彫刻を私たちが視るとき、私たちはアフリカの人と同じものを感じているのだろうか? と小泉氏は問いかけています。これはもう……難しいよねえ……検証しようがないよねえ……という気分にさせられますね。

でも個人的にちょっと面白かったのは、その「力」についての捉え方が、今回の特集の著者たちの間で既にちょっとずつ違っているんじゃないかなっていうことでした。上の小泉氏は、まあ私は全然人類学のことは知らないのですが、こう言ってよければ、「人類学的な」捉え方なのかな、と。人と人の違いのことというか分かり合えなさというか、良い悪いとか感情レベルのことではなくってそれは確実にあるのだということというか。

それに対し「『イメージ』雑感―美術史学の立場から」(長屋光枝)では、「イメージ」というものについて、ピュグマリオンの逸話を引き、この伝説が示唆するのは「イメージの生成に現実が必要とされないこと、イメージが現実を超える力を持つこと、イメージが人間と身体的にかかわりうること」であり、人々の中にあった「イメージの魔術的な力への怖れ」である、と述べている。タイトルの通り「美術史的な」であるのか、もうちょっと大きな捉え方なのかな、と。「人類学とアート」ではたちうちできない怪物のようにさえ思えた「イメージの力」でしたが、私たちの中にある共通のエネルギーみたいなものの存在について希望を持てるような気が、私なんかはちょっとしてきてしまいました。

とはいえかなわないなーと思ったのは、「アートディレクターが見たみんぱく資料」(原田祐馬)で紹介されている作品の中のひとつ、岩手県の「鹿頭(ししがしら)」について、原田氏のつけたコメントのうちの一文。「雪景色のなかに、この装束を着た人がすっと立っているのを想像した」。この想像力! このくらいのものがなければ、他者の「イメージ」に寄り添うことなんかできないかもしれません。人類学とも美術史学とも違う、「場」や、人間の当たり前の感じ方とか、そういうものをきちんと扱うコメントで、どの作品についてもうむむと唸らされました。

 

というわけで私としては心の準備は万端整えて、明日からの「イメージの力」展、大変楽しみにしております。

「イメージの力」展は2月19日から6月9日まで、六本木の国立新美術館にて!

 

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